餓狼伝説〜狼は眠らない

嘉神亜莉子
SNKの格闘ゲーム「餓狼伝説」について思い出を語ってほしいという依頼を受けたので、ここに記念すべき第一回目の座談会を開く事になったわ。
いわゆるストリートファイター2にはじまる格闘ゲームブーム、私は完全に乗り遅れ……というよりそんなブームの存在知らなかったわよ。

嘉神ティリス
姉ちゃんの住んでた所、ゲーセンなかったしね。

嘉神亜莉子
………

フェルグヴェドス
そんな中、たまたま本屋で見かけたコミックゲーメストという雑誌を買ってみたら、これに餓狼伝説の漫画が連載されてて、更にタイミングよく近所のスーパーに野外ネオジオことMVSが設置されたんだったな。

嘉神亜莉子
そんなわけで、初めて手を出した格闘ゲームは「餓狼伝説2」ね、持ちキャラはテリー・ボガードと不知火舞だったわよ。
スト2で流行りの連続技がなかったけど、そもそもスト2を知らなかった私にはそんなことはどうでもよく、SNKの代名詞とも呼べる「超必殺技」に酔いしれていたわね。
追い詰められた状態から体力7割はあった敵を超必殺技一撃で倒した時は、バックのギャラリー(子供たち)の間でどよめきが起きたものよ。

嘉神ティリス
真のエンディングは1コインでクリヤーしないと見れないから、よく最終ボスのクラウザーにやられて、ギャラリーをがっかりさせてたよね。

嘉神亜莉子
………

フェルグヴェドス
その後、続編として餓狼伝説スペシャルが登場したな、ゲーム雑誌では ギースが帰ってきた!!と煽っていたが、餓狼1をやっていなかった身としては、ギースって誰だよ……と、単なる新キャラにしか見えなかった。
……だが

嘉神亜莉子
当て身投げ赤袴、それだけで十分ね……

嘉神ティリス
餓狼伝説シリーズの主人公がギース・ハワードに脳内変換された瞬間だったわけだ。
また、この頃から大阪に移り住み、家庭用ネオジオを購入した事もあり、友人4,5人で集まって徹夜で対戦とかが当たり前になっていたね。

嘉神亜莉子
前述のコミックゲーメストはすっかり毎月購読者となっていたけど、そこでギースを主人公にした渋い漫画が不定期連載されていて、そこのギースがまた格好よかったのよ。

フェルグヴェドス
「殺人鬼の理屈と帝王の道は違う!殺すしか能がないのが殺人鬼、殺す相手を選べるのが支配者だ」
「我々はお互いに自分の欲の為だけに生きている 空約束もするし裏切りもするのだ」
「凡人三代の修行の積み重ねなど、天才の前には何の価値もない!」

嘉神亜莉子
それでこそギース……
ダークヒーローの美学ね。

フェルグヴェドス
ちなみにその漫画家、現在はこれまた渋い麻雀漫画を描いているな。
「インド人を右に」という、ゲーメスト読者にしかわからない小ネタをこっそり入れてたぞ。

嘉神ティリス
姉ちゃんそれフリテン。

嘉神亜莉子
餓狼伝説スペシャルで最高潮に達したMy対戦格闘ブームだけど、その期待が大きすぎた事もあり、餓狼3は正直失望、ほとんどプレーすることはなかったわね。
その後リアウバウトシリーズとして続く餓狼だけど、私の心は既にKOF、侍魂シリーズに持っていかれていたわ。

フェルグヴェドス
ネオジオのソフトは一ヶ月分の食費を覚悟しないとならない高値、KOF、侍魂と平行して餓狼シリーズまで購入するには無理もあったしな。

嘉神亜莉子
それもあるけど……
それもあるけど……

嘉神ティリス
む?

嘉神亜莉子
かつてこれほどまで愛されたラスボスがいただろうか……という感動すら覚えたリアルバウト餓狼伝説のキャッチコピー「ギース・ハワード最後の戦い」
ところが、リアルバウトスペシャル、リアウバウト2と新作が出るたびに、
そんなことはなかったかの様に復活してるじゃないの!!

フェルグヴェドス
ストーリーと関係ないスペシャル版とか、亡霊とか、毎回それなりに理由はつけているけどな。

嘉神亜莉子
そんなのこじつけじゃない!!
そのうち
「誰も死んだなんて言ってないよ?」とか「精霊になりました」とか言い出しかねないわよ!!

……誰か、呼びましたか?

嘉神亜莉子
………

フェルグヴェドス
………

嘉神ティリス
………

フェルグヴェドス
まぁ……そんなわけで、リアウバウトシリーズは、正直どれがどれだったかも覚えていない。

嘉神ティリス
唯一覚えているのは近所のゲーセンで「リアルアバウト餓狼伝説入荷!!」って思い切り誤植してたことだね。
おっと、そこでインド人を右に!!

嘉神亜莉子
そこから舞台は突然10年後となり、新作「餓狼〜MARK OF THE WOLVE」が登場したわね。
SNKの好きな所は、ゲーム内にしっかりとした年表があって、龍虎2に若かりし日のギースが出てきたり、月華に龍虎のキャラの先祖が出てくる等、違うタイトルとの間でも物語がリンクされているという所だけど……

嘉神ティリス
なんか歯切れ悪いな。

フェルグヴェドス
ここでもギースの亡霊を受け継ぐかの様に、ギースの忘れ形見ロックが登場。
テリーに育てられたので、彼の技も使えるという優遇ぶり。
しかも顔は同人狙いの美形兄ちゃんで、勝利エフェクトは羽だ。

嘉神亜莉子
そんな見え透いた罠に私がはまるわけが……当て身投げもあるじゃないの!!

嘉神ティリス
持ちキャラ決定だな。

フェルグヴェドス
キャラはともかく、ゲーム性の方は「こんなの餓狼じゃない」という声が多く聞かれたが、リアルバウトの量産であれだけ「いい加減同じシステムは飽きた」となっていたから新システムにしたのに、そしたら今度は「こんなの餓狼じゃない」か。
何かを作るって、本当に難しいものだな。

嘉神ティリス
……なんか泣いてないか?

嘉神亜莉子
まぁ、個人的には結構好きだったけど、既にゲーセンで格闘ゲームをする回数そのものが減っていたので、ストーリーとかほとんど知らないわね。

フェルグヴェドス
あくまでも私個人の好みの話だが、「キャラクターはSNK、ゲーム性はカプコン」だったな。
カプコンの格闘ゲームは初プレーでクリヤーとかできて、ゲームとして楽しめるものが多かった。
その反面、SNKの格闘ゲームはラスボスが「エンディング見せたくないのか?」というくらい凶悪なものばかりだった。

嘉神亜莉子
しゃがみキックだけで倒せる餓狼伝説スペシャルのクラウザーを除いてね。

フェルグヴェドス
だが、キャラクターの魅力やその背景のストーリーはSNKの方が魅力を感じ、落書きは自然とSNKキャラばかり……
というより、カプコン格闘ゲームのキャラって一度も絵を描いた事ないかもしれない。

嘉神亜莉子
そんなわけで、SNK格闘ゲームのキャラは、キャラが独立したCD化、アニメ化、更には東京某市で水道局のポスターに採用される等、各メディアに進出していたわね。

……誰か、呼びましたか?

嘉神亜莉子
………

嘉神ティリス
当時は見事なまでのSNK信者っぷりを発揮して、それらのほとんどを持っていたね。
また、SNKは音楽も逸品揃いだったので、音楽CDもかなり持っていたよ。

フェルグヴェドス
しかし、本職以外の場所にお金を注ぎ込んだSNKは、格闘ゲームブームの下火と共にそれらが自らの首を絞めて倒産。
第2号からずっと買い続けていたコミックゲーメストも廃刊となり、気がつけば、最後にネオジオの電源入れたのって何年前だったっけ?となっていたな。

嘉神亜莉子
ところが、プレステ4の時代になって、突然のKOF復活。
狼は、眠らない……